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高松高等裁判所 昭和38年(う)381号 判決 1965年9月06日

主文

原判決を破棄する。

本件を高知地方裁判所に差し戻す。

理由

本件控訴の趣意は、記録に編綴してある弁護人海野普吉、同司波実共同作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。

先ず控訴趣意第一点の訴訟手続に法令の違反があるとの主張について判断する。

原審記録を精査すると、原審弁護人司波実は、昭和三八年七月一九日付にて被告人より弁護人に選任され、(同日付連署の届書が受理された)同日東京地方裁判所において行われた証人小原基邦の尋問に立会したが、その後同弁護人には公判期日の通知がなされず、同三八年九月五日に指定せられた同年一〇月一七日の第六回公判期日には中平博弁護人のみ出頭して、審理を終了し、判決宣告期日を同年一〇月二九日と指定されたが、この判決宣告期日も司波弁護人に通知された形跡はないことが明らかである。

しかして、原審においては、昭和三八年七月一九日以降、中平、司波両弁護人があるのに拘らず、主任弁護人が定められてないことは記録上明白であるのみならず、昭和三八年九月五日原裁判所が弁護人中平博に送達した同年一〇月一七日の公判期日通知状は、同弁護人を主任弁護人に指定した上での期日通知であったと認むべき証左もないので、右中平弁護人に対する期日通知をもって刑事訴訟規則第二五条第一項の要件を充足するものとは認め難いのみならず、司波弁護人が選任された当時次回公判期日はおって指定となっていたことも明白であるので、刑事訴訟法第二七三条第三項により司波弁護人としては独立して新期日の通知を受ける権利を有していたものと解せられる。

それにも拘らず、原審は右司波弁護人に右の如く第六回公判期日の通知をせず、その後の判決宣告期日の通知もせず、同弁護人に弁論の機会を与えることなく原判決の宣告をしたことは、原審訴訟手続に刑事訴訟法第二七三条第三項違反があり、その結果、右公判期日における同弁護人の弁護権を不当に制限し、ことに、論旨指摘のように、刑事訴訟法第四一条第二九三条第二項により弁護人の独立した訴訟行為であると認められている最終意見陳述権を無視したことに帰するから、右訴訟手続の法令違反は判決に影響を及ぼすこと明らかであると認められる。結局論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。よって、爾余の控訴趣意に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第一項第三七九条により原判決を破棄し、同法第四〇〇条本文により本件を原裁判所に差し戻すこととする。

(裁判長裁判官 加藤謙二 裁判官 加藤竜雄 越智伝)

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